ぐだぐだ

きれいな写真をみつけたので、リンクをつけてみたけど
許可もとってなかったので、やっぱやめるかと、削除したんだけど、
それども写真のほうのリンクが消えなくなってしまった。


画像を削除するとなんだかわからなくなってしまうので、
画像を再度リンクすることにしました。



すごいきれいな写真です。



でも、でか







天気予報みてたけど、今日はほとんど30度きらないらしい。
熱中症に気をつけろとのことです。

今日は、クーラーかけっぱなしかな。


時間があったので、特許庁で調べてみた。
請求項は、2個しかないんだ。



(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】第2739722号
(24)【登録日】平成10年(1998)1月23日
(45)【発行日】平成10年(1998)4月15日
(54)【発明の名称】ピストンリング
(51)【国際特許分類第6版】
C23C 14/06
F02F 5/00
F16J 9/26
【FI】
C23C 14/06
F02F 5/00
F16J 9/26
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願平5−103762
(22)【出願日】平成5年(1993)4月7日
(65)【公開番号】特開平6−248425
(43)【公開日】平成6年(1994)9月6日
【審査請求日】平成7年(1995)7月11日
(31)【優先権主張番号】特願平4−358549
(32)【優先日】平4(1992)12月28日
(33)【優先権主張国】日本(JP)
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
【住所又は居所】東京都千代田区九段北1丁目13番5号
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目33番8号
(72)【発明者】
【氏名】小室 寿朗
【住所又は居所】新潟県柏崎市北斗町1番37号 株式会社リケン 柏崎事業所内
(72)【発明者】
【氏名】大矢 正規
【住所又は居所】新潟県柏崎市北斗町1番37号 株式会社リケン 柏崎事業所内
(72)【発明者】
【氏名】今井 照男
【住所又は居所】新潟県柏崎市北斗町1番37号 株式会社リケン 柏崎事業所内
(74)【代理人
弁理士
【氏名又は名称】桑原 英明
【審査官】 三宅 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開 平1−156461(JP,A)
【文献】特開 昭61−87950(JP,A)
【文献】特開 平3−277870(JP,A)
【文献】実公 昭60−2183(JP,Y2)


(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも外周摺動面に、皮膜の空孔率が1.5〜20%である窒化クロムよりなり厚さが1〜80μmの皮膜を形成してなるピストンリング
【請求項2】 請求項1に記載のピストンリングにおいて、前記皮膜の破断面が母材表面から皮膜の表面に向かって柱状の形態を有するピストンリング


【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐摩耗性に優れた皮膜を少なくとも外周摺動面に有する内燃機関ピストンリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ピストンリングは、エンジンのシリンダライナ内に往復動自在配置されたピストンのリング溝にその外周面がシリンダライナ内周面に摺接関係となるよう組み込まれ、主に燃焼室の気密化、シリンダー表面に形成される潤滑油膜の膜厚制御、および燃焼熱をピストンからシリンダライナへ伝送することによるピストンの冷却等の働きをする。従って、ピストンリング特性として耐摩耗性、耐焼付性、耐熱性、保油性およびシリンダ側の摩耗抑制などが高い次元で要求される。これらの要求に応えるため、現在、ピストンリングは靱性が高く、耐摩耗性、耐熱性に優れる鋼などの鉄系材料に摺動特性を改良するための表面処理を施していたものを使用していた。従来より行なわれているピストンリングの表面処理方法として、窒化処理、クロムめっき処理、モリブデン溶射処理などが挙げられる。
【0003】また、特公平1−52471号及び特開昭62−120471号は、表面処理の具体例として、PVD(Physical Vapor Deposition)法により、摺動面に金属窒化物や金属炭化物等の皮膜をコーティングしたピストンリングを開示するが、この金属窒化物や金属炭化物の皮膜は、優れた耐摩耗性及び耐焼付性を示しており、特に窒化チタンや窒化クロムなどがエンジンへの適合性がよいということで注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、近年、エンジンの高出力化や高性能化に伴い、ピストンリングに要求される条件はますます苛酷なものとなり、最近の高出力エンジン用ピストンリングには、従来の表面処理では対応できない場合が生じ始めており、更に優れた耐摩耗性を有するピストンリングのための表面処理技術の開発が望まれている。例えば、窒化チタンや窒化クロム皮膜は耐摩耗特性が優れているものの最近のエンジンでは、これらセラミックスコーティング皮膜でも摺動特性が充分満足されない状況が生じている。即ち、ピストンリングの外周皮膜表面にピッチング疲労が原因と考えられる欠け状の剥離が生じる問題がある。そこで、現状の表面処理よりも耐剥離性に優れたセラミックスコーティング皮膜を被覆したピストンリングが望まれている。従って本発明の目的は、欠け状剥離が発生しにくく同時に耐摩耗性および密着性にも優れた皮膜を被覆したピストンリングを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段とその作用】上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、少なくても外周摺動面に、皮膜破断面結晶が柱状なる形態を有する窒化クロム皮膜を形成されているピストンリングは、外周摺動面の表面に欠け状剥離が生じにくく同時に耐摩耗性および密着性に優れていることを見出し本発明を完成した。すなわち、本発明のピストンリングは少なくともその外周摺動面に、皮膜破断面結晶が柱状なる形態を有する窒化クロムよりなる厚さが1〜80μmの皮膜を形成してなる、又は空孔率1.5〜20%である窒化クロムよりなる厚さが1〜80μmの皮膜を形成してなることを特徴とする。
【0006】本発明において、皮膜で被覆する基板すなわちピストンリング本体は従来公知のいかなる形式でもよく、その材料は、13Crおよび17Crステンレス鋼、パネ鋼、工具鋼、鋼鉄などの鉄系材料、及びそれらの材料に窒化処理やクロムめっきを施したもの等を使用する事ができる。ピストンリングの皮膜厚さは、初期なじみにおける摩耗で表面層が消失する可能性を考慮して1μm以上とし、初期なじみ完了以降にも皮膜を残すことが必要である。一方、必要以上に膜厚を厚くする事は経済上好ましくなく、膜厚が60μmを超えると皮膜に亀裂が生じやすく、密着力が低下するので、60μm以下とすることが望ましい。しかし、耐摩耗耐久性を特に必要とする用途の場合には、80μmまでの皮膜を形成することも可能である。
【0007】CrN皮膜を形成させる場合、CrNの理論密度は6.14g/cm3であり、ピストンリングのCrN皮膜は、その緻密度が高くなると、皮膜が脆く、欠け状剥離が発生し易くなる。剥離を防止するために、CrN皮膜の空孔率をあげ、空孔率を1.5%以上にする必要があり、一方皮膜の空孔率をあまり高くすると、硬さの低下を招き、耐摩耗性が劣化する。このため皮膜の空孔率は20%以下とする必要がある。この空孔のある皮膜は、イオンプレーティング時の真空度を0.13〜13.3Paにすることによって作成でき、この真空度の範囲で、高真空に近い程空孔率は低く、低真空に近い程空孔率の高い皮膜となる。この場合、皮膜の組織は窒素ガス圧で決まることから、導入窒素ガスの一部をアルゴンに置換することによって、Cr2NやCrNとCr2Nの混合組織等の空孔のある皮膜もCrN同様に作成することが出来る。皮膜の硬さは、皮膜の空孔率が1.5%から20%と増加するにつれ軟化し、表面から測定した微小硬さhmvは約1000から600に減少する。皮膜の空孔率は、皮膜密度を測定することで容易に算定することができる。
【0008】また、空孔率を限定したCrN皮膜において、さらに耐剥離性を向上させるため、皮膜の破断面形態を柱状にすること、さらにその結晶が外周摺動面に平行なCrN(111)面を方位配向することは、一層効果がある。ピストンリングの皮膜厚さは、初期なじみにおける摩耗で表面層が消失する可能性を考慮して1μm以上とし、初期なじみ以降にも皮膜を残すことが必要である。一方、必要以上に膜厚を厚くすることは経済上好ましくなく、膜厚が60μmを超えると皮膜に亀裂が生じ易く、密着力が低下するので、60μm以下とすることが必要である。しかし、耐摩耗耐久性を特に必要とする用途の場合には、80μmまでの皮膜を形成することも可能である。
【0009】本発明においては、イオンプレーティング法により、好ましくは、皮膜をピストンリングに形成させる。イオンプレーティング法は、PVD法により形成される皮膜の一種である。PVD法は、皮膜を形成する技術であり、基本的には、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングの3法に分類できる。このうちでも特に、クロムの蒸気を窒素と反応させ、窒化クロム皮膜をピストンリング上に堆積させることができる反応性イオンプレーティングによる皮膜が好ましい。クロム蒸気は、HCDガンや電子ビームなどの高エネルギービームをクロムに照射し、蒸発させることにより得る。また陰極アークプラズマ式イオンプレーティング法およびスパッタリング法のように、陰極からクロム粒子を飛び出させることによりクロム蒸気を得てもよい。クロムは窒化物を形成しやすい元素である。そこでクロムの蒸気に窒素を混合した気相中でプラズマを発生させると、クロムはイオン化し、それぞれ窒素イオンと化合し窒化クロムを形成する。その結果、基材であるピストンリング母材の表面に窒化クロムの皮膜が形成される。その際、窒素ガス供給量が多い場合は、CrNなる組成で、窒素ガス供給量が少なくなるにつれCr2 Nなる組成となりさらに少ない場合は、未反応のCrが生成される。
【0010】上記皮膜をピストンリング本体の外周摺動面に形成させる一方法を以下に詳述する。ピストンリング母材を洗浄し、表面に付着した汚れを取り、充分清浄化してイオンプレーティング装置の真空チャンバー内に挿入した。チャンバー内圧力が1.3×10-3〜5×10-3 Pa になるまで真空引きを行なってから、イオンプレーティング装置に内蔵されているヒーターにより加熱してピストンリング母材の内在ガスを放出させる。加熱温度は300〜500℃とするのが好ましい。その後100〜400℃まで冷却する。チャンバー内圧力が4.0×10-3 Pa 以下になった時点でクロムからなるターゲットを陰極として、その表面でアーク放電を発生させクロムイオンを飛び出させる。この際ピストンリング母材にはバイアス電圧を印加しておき、陰極より飛び出した金属イオンを基材表面に高エネルギーで衝突させる方法、いわゆるボンバードクリーニング法により基材表面の酸化物除去と活性化処理を行う。そのときのバイアス電圧は−700〜−900Vとするのが好ましい。その後バイアス電圧を低下させクロムイオンをピストンリング外周摺動面に堆積させながら、窒素ガスをチャンバー内に導入し、プラズマ内を通過させる。それにより窒素をイオン化して、窒素分圧を1.3×10-1〜13.3 Pa 程度にし、バイアス電圧を0〜−100V印加してピストンリング外周面にイオンプレーティング皮膜を形成させる。皮膜形成後、真空チャンバ内で200℃以下になるまで冷却してから、ピストンリングをチャンバーから取り出す。皮膜の空孔率は操作圧を制御することにより適宜選択することが可能である。以上が窒化クロム皮膜をピストンリングに形成させる方法である。得られたピストンリングは、欠け状剥離が発生しづらくかつ耐摩耗性および密着性に優れる。
【0011】本発明において、皮膜とピストンリングの母材との密着力をさらに高める方法としてピストンリング母材と皮膜との間にクロム金属からなる下地層を形成させる。この手段においては、皮膜形成の際、反応ガスを導入する前にクロムのイオンプレーティングを行うと、ピストンリング母材にクロムの下地層が形成できる。このクロム金属の下地層は、熱膨張がピストンリング母材に近く、熱応力の影響を受けにくいため、密着性がさらに向上し、しかも柔軟性に富む。クロム金属の下地層は、0.1〜2μmの厚さに形成するのが好ましい。0.1μm未満では密着力向上の効果が薄く、0.1〜2μmの厚さで充分な効果を示す。また2μmを超えてもそれ以上の効果を得ることはできず、また経済上も好ましくない。このように皮膜層とリング母材の間に密着性および柔軟性に富む下地層を形成することは、皮膜の剥離防止に一層効果がある。
【0012】
【実施例】図1は本発明におけるピストンリング1と、形成された皮膜2Aを示す断面図である。皮膜を形成する面は、ピストンリングの外周摺動面2を必須とするが、他の部分である内周面3、あるいは上下面4などのいずれに形成しても差し支えはない。図2は本発明によるピストンリング1を装着したピストン5がシリンダライナ6に組込まれた状態の一部分を示す断面図である。図3は皮膜の破断面が母材表面から皮膜の表面に向って柱状の形態を有することを示す金属組織の顕微鏡写真である。
【0013】実施例1本実施例では、呼び径×幅×厚さがφ95×2.5mm×3.4mm、材質がSUS440材のピストンリングを使用した。PVD処理は、陰極アークプラズマ式イオンプレーティング装置を用いた。ピストンリング母材をフロン洗浄し、イオンプレーティング装置の真空チャンバー内に挿入した。チャンバー内圧力が1.3×10-3 Pa になるまで真空引きを行なってから、イオンプレーティング装置に内蔵されているヒーターにより300〜500℃で加熱してピストンリング母材の内在ガスを放出させ、その後200℃まで冷却した。チャンバー内圧力が4.0×10-3 Pa 以下になった時点ではバイアス電圧を−700〜−900V印加しておき、アーク放電を発生させ、クロムイオンを飛び出させた。その後チャンバー内に導入した窒素分圧を1.3×10-1〜13.3 Pa程度にして、バイアス電圧を0〜−100V印加してピストンリング外周摺動面にイオンプレーティング皮膜を形成させた。皮膜形成後、真空チャンバー内で200℃以下になるまで冷却して、ピストンリングをチャンバーから取り出した。
【0014】上記方法で、ピストンリング外周表面に厚さが40μmであり皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCrN組成でかつ外周摺動面に平行な(111)面が方位配向する結晶よりなる皮膜(実施例1)を被覆した。空孔率は2.5%である。得られたピストンリングの皮膜破断面を走査型電子顕微鏡により二次電子像を観察した。図3に顕微鏡写真を示す。母材表面から皮膜表面に向かって柱状なる結晶を確認できる。また組成および配向性は、リング外周被覆面に対し、X線を照射し、X線回折することによりCrN組成でかつ(111)面が方位配向していることを確認した。
【0015】実施例2,3,比較例1実施例1と同方法で、ピストンリング外周表面に厚さが40μmであり皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCrN組成でかつ外周摺動面に平行な(111)面が方位配向する結晶よりなり空孔率3.8%の皮膜(実施例2)と、ピストンリング外周表面に厚さが40μmであり皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCr2N組成よりなり空孔率4.0%の皮膜(実施例3)を被覆した。得られたピストンリングの皮膜密着性を測定した。密着性の測定は、ツイスト試験と呼ばれるもので、ピストンリング合い口部の一方を固定し、他の一方をねじって、皮膜の剥離が生ずるまでのねじり角を測定するものである。比較例1として、実施例1と同材質および同寸法のピストンリング本体に皮膜断面が柱状の形態を有しない窒化クロムとクロムの複合イオンプレーティング皮膜の単一相を42μm皮膜したリングについても実施例2,3と同様に皮膜密着性を測定した。実施例2,3および比較例1の測定結果を表1に示す。なお、測定値は比較例1のねじり角を1とした角度比で表1に示した。表1から明らかなように、本発明の皮膜は比較例に比べて、剥離が生じるまでのねじり角が大きく、密着性が優れている。
【0016】
【表1】

【0017】実施例4,5,比較例2,3実施例1と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚さが40μmであり皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCrN組成でかつ外周摺動面に平行な(111)面が方位配向する結晶よりなる皮膜(実施例4)と、ピストンリング外周表面に厚さが40μmであり皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCr2 N組成よりなる皮膜(実施例5)を被覆した。得られたピストンリングを4気筒4サイクルのディーゼルエンジンのトップリングに組込み、台上実機試験を実施した。試験条件は次に示す通りであった。
回転数 : 4,000rpm試験時間 : 100時間オイル温度 : 120℃水温 : 100℃なおエンジンはインタークーラー付き過給器が備っている。実機試験における外周摺動面摩耗量の測定を3回行った。結果を表2に示す。比較例としてピストンリングの外周摺動面にクロムめっきを厚さ100μm施したもの(比較例2)と皮膜断面が柱状の形態を有しない窒化クロムイオンプレーティング皮膜の単一相を42μm被覆したもの(比較例3)について、実施例4および5と同様に実機試験を行った。その結果を表2に示す。
【0018】
【表2】

【0019】表2から明らかなように、本発明による皮膜を被覆したピストンリングはクロムめっきしたピストンリングに比べ、摩耗量が1/5と大幅に減少し、破面が柱状でない窒化クロムをイオンプレーティング法で被覆したピストンリングと比べても摩耗量が4/5程度と減少している。ディーゼルエンジンにおいては、燃料の燃焼によって、燃料中の硫黄分がエンジンオイル中に入り込み、オイルの酸化を増加させ、ピストンリングは単なる摩擦摩耗のみではなく、腐食摩耗が促進される雰囲気にさらされる。本発明による皮膜を被覆したピストンリングは耐摩擦摩耗性および耐腐食摩耗性に優れている。
【0020】実施例6,7,比較例4実施例1と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚さが40μmであり皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCrN組成でかつ外周摺動面に平行な(111)面が方位配向する結晶よりなる皮膜(実施例6)と、ピストンリング外周表面に厚さが40μmであり皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCr2 N組成よりなる皮膜(実施例7)を被覆した。得られたピストンリングを4気筒4サイクルのディーゼルエンジンのトップリングに組込み、台上実機試験を実施した。試験条件は次に示す通りであった。
回転数 : 4,000rpm試験時間 : 100時間オイル温度 : 120℃水温 : 100℃なおエンジンはインタークーラー付き過給器が備っている。実機試験におけるピストンリング外周摺動面の欠け状剥離の状態を観察した。結果を表3に示す。比較例として皮膜断面が柱状の形態を有しない窒化クロムとクロムの複合イオンプレーティング皮膜の単一相を42μm被覆したもの(比較例4)について、実施例6および7と同様に実機試験を行った。その結果を表3に示す。
【0021】
【表3】

【0022】表3から明らかなように、本発明による皮膜を被覆したピストンリングは、いずれも全く剥離が発生せず、破面が柱状でない窒化クロムをイオンプレーティング法で被覆したピストンリングと比べても大幅に改善されている。本発明による皮膜を被覆したピストンリングは耐欠け状剥離性に優れている。
【0023】実施例8本実施例では、呼び径×幅×厚さがφ95×2.5mm×3.4mm、材質がSUS440材のピストンリングを使用した。PVD処理は、陰極アークプラズマ式イオンプレーティング装置を用いた。ピストンリング母材をフロン洗浄し、イオンプレーティング装置の真空チャンバー内に挿入した。チャンバー内圧力が1.3×10-3 Pa になるまで真空引きを行なってから、イオンプレーティング装置に内蔵されているヒーターにより300〜500℃で加熱してピストンリング母材の内在ガスを放出させ、その後200℃まで冷却した。チャンバー内圧力が4.0×10-3 Pa 以下になった時点で、バイアス電圧を−700〜−900V印加しておき、アーク放電を発生させ、クロムイオンを飛び出させた。その後チャンバー内に導入した窒素分圧を1.3×10-1〜13.3 Pa程度にして、バイアス電圧を0〜−100V印加してピストンリング外周摺動面にイオンプレーティング皮膜を形成させた。皮膜形成後、真空チャンバー内で200℃以下になるまで冷却して、ピストンリングをチャンバーから取り出した。上記方法で、ピストンリング外周表面に厚さが40μm、皮膜空孔率が3.9%であり、破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有する窒化クロム皮膜(実施例8)を被覆した。皮膜の空孔率は、皮膜被覆前後の重量を精密に測定し、皮膜体積で除して算出した。得られたピストンリングの皮膜破断面を走査型電子顕微鏡により二次電子像を観察した。図3に顕微鏡写真を示す。母材表面から皮膜表面に向かって柱状なる結晶を確認できる。
【0024】実施例9,10,比較例5実施例8と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚さが40μm、皮膜空孔率が3.9%であり、皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有するCrN皮膜(実施例9)と、ピストンリング外周表面に厚さが40μm、皮膜空孔率が2.3%であるCrN皮膜(実施例10)を被覆した。得られたピストンリングの皮膜密着性を測定した。密着性の測定は、ツイスト試験と呼ばれるもので、ピストンリング合い口部の一方を固定し、他の一方をねじって、皮膜の剥離が生ずるまでのねじり角を測定するものである。比較例5として、実施例8と同材質および同寸法のピストンリング本体に皮膜空孔率が、0.2%である窒化クロム皮膜を38μm皮膜したリングについても実施例9,10と同様に皮膜密着性を測定した。実施例9,10および比較例5の測定結果を表4に示す。なお、測定値は比較例5のねじり角を1とした角度比で表4に示した。さらに表4には、皮膜の表面微小硬さを付記した。
【0025】
【表4】

【0026】表4から明らかなように、本発明の皮膜は比較例に比べて、剥離が生じるまでのねじり角が大きく、密着性が優れている。
【0027】実施例11,12,比較例6,7,8実施例8と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚さが42μm、皮膜空孔率が3.9%であり、皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、かつ外周摺動面に平行な(111)面が方位配向する結晶よりなるCrN皮膜(実施例11)と、ピストンリング外周表面に厚さが40μm、皮膜空孔率が2.3%であるCrN皮膜(実施例12)を被覆した。得られたピストンリングを4気筒4サイクルのディーゼルエンジンのトップリングに組込み、台上実機試験を実施した。試験条件は次に示す通りであった。
回転数 : 4,000rpm試験時間 : 100時間オイル温度 : 120℃水温 : 100℃なおエンジンはインタークーラー付き過給器が備っている。実機試験における外周摺動面摩耗量の測定を3回行った。結果を表5に示す。比較例としてピストンリングの外周摺動面にクロムめっきを厚さ100μm施したもの(比較例6)と皮膜空孔率が0.2%である窒化クロムイオンプレーティング皮膜を42μm被覆したもの(比較例7)、および皮膜空孔率23.5%である窒化クロム皮膜を40μm被覆したもの(比較例8)について、実施例11および12と同様に実機試験を行った。その結果を表5に示した。
【0028】
【表5】

【0029】表5から明らかなように、本発明による皮膜を被覆したピストンリングはクロムめっきしたピストンリングに比べ、摩耗量が1/5と大幅に減少し、イオンプレーティング法で窒化クロムを空孔率が小さく緻密に被覆したピストンリングと比べても耐摩耗量が同等以上である。本発明皮膜よりも空孔率の大きい窒化クロム皮膜は、本発明品と比較し耐摩耗性に劣る。
【0030】実施例13,14,比較例9実施例8と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚さが42μm、皮膜空孔率が3.9%であり、皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有し、かつ外周摺動面に平行な(111)面が方位配向する結晶よりなるCrN皮膜(実施例13)と、ピストンリング外周表面に厚さが40μm、皮膜空孔率が2.3%であるCrN皮膜(実施例14)を被覆した。得られたピストンリングを4気筒4サイクルのディーゼルエンジンのトップリングに組込み、台上実機試験を実施した。試験条件は次に示す通りであった。
回転数 : 4,000rpm試験時間 : 100時間オイル温度 : 120℃水温 : 100℃なおエンジンはインタークーラー付き過給器が備っている。実機試験におけるピストンリング外周摺動面の欠け状剥離の状態を観察した。結果を表6に示す。比較例として皮膜空孔率が0.2%である窒化クロム皮膜を42μm被覆したもの(比較例9)ついて、実施例13および14と同様に実機試験を行った。その結果を表6に示した。
【0031】
【表6】

【0032】表6から明らかなように、本発明による皮膜を被覆したピストンリングは、いずれも全く剥離が発生せず、イオンプレーティング法で空孔率の小さい窒化クロムを被覆したピストンリングは剥離が全数発生した。本発明による皮膜を被覆したピストンリングは耐欠け状剥離性に優れている。
【0033】
【発明の効果】以上、詳述したことから明らかなように、皮膜の破断面が母材表面から皮膜表面に向かって柱状の形態を有する窒化クロムからなる皮膜を少なくとも外周摺動面に被覆した、又は1.5〜20%の空孔率を有するCrN皮膜を少なくとも外周摺動面に被覆した本発明のピストンリングは、従来から使用されているピストンリングに比較して、皮膜の密着性、耐摩擦摩耗性、耐腐食摩耗性および耐剥離性に優れており、ピストンリングの寿命を増大することができる。

【図面の簡単な説明】
【図1】ピストンリングの部分断面図である。
【図2】ピストンリングのピストンへの装着状態を示す図である。
【図3】ピストン外周面の皮膜の金属組織の顕微鏡写真である。
【図4】比較例に使用したピストンリングの柱状でない皮膜の金属組織の顕微鏡写真である。

【符号の説明】
ピストンリング本体
2 外周摺動面
2A 皮膜
3 内周面
4 上下面
5 ピストン
6 シリンダライナ


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】