平成15年度弁理士試験論文式筆記試験問題

問 題Ⅰ
菓子aとその製造装置Aの発明をした甲は、それらを明細書に記載した上で、菓子aの発明についての特許出願Xをし、それと同時に出願審査の請求をした。その後、甲は、製造装置Aを改良した菓子aの製造装置Bの発明をし、特許出願Xの出願の日から10月後に、製造装置A及びBの発明についても特許を取得したいと考えた。
この場合において、甲が特許法上とりうる手続について説明せよ。

検討
甲 出願X 菓子a 製造装置A 審査請求済み
その後
  製造装置Bについて発明



優先権主張する場合
優先権41条
共同発明38条(書かなくてもいいのかな)
単一性37条
特許出願Xは、取り下げられる
後の出願の審査請求もしなくてはならい。(48条の3)
審査請求を取下げれば、審査請求料の一部返還(195条?項)→やっぱやめた

優先権主張をしない場合
共同発明38条(書かなくてもいいのかな)
拡大された先願29条の2
後の出願自体は、審査請求が必要(48条の3)

特許出願Xの出願の日から10月後に権利の取得に関し、甲は検討を行っている。この場合、まず優先権主張して出願する手続きを取り、包括的な権利取得を検討することが考えられる(41条)。また、優先権を主張せず、個別に出願し、権利化を行うことも可能である。そこで、優先権を主張した場合と、優先権を主張しない場合に分けて説明する。





1.優先権を主張した場合
優先権を主張する場合は、特許出願Xの日から1年以内に新たな特許出願をする必要がある。また、特許出願Xが変更出願や分割出願でないことを確認しておく必要がある(41条)。あらたな特許出願を行う際は、発明の単一性を検討する必要がある(37条)。本問においては、菓子aと製造方法Aと製造方法Bが特別な又は対応する技術的特徴を有していることを確認する必要がある。さらに、特許出願Xに優先権を主張して新たな特許出願を行った場合は、優先権を取り下げない限りは、出願から1年3月後に特許出願Xは取り下げたものとみなされる(42条)。よって、権利を取得するためには、新たな特許出願の審査請求が必要になる(48条の3)。


2.優先権を主張しない場合
すでに、特許出願Xは出願されている。その中に菓子aと製造装置Aの開示がありるため、菓子aと製造装置Aは、特許出願Xで権利化を行うべきである。新たな出願については、製造装置Bについて権利化を行うべきである。
あらたな特許出願は、特許出願Xが公開される前に行うべきである。公開される前であれば、特許出願Xを引用文献として29条の規定に基づく拒絶理由通知がなされることがないためである。本問においては、特許出願Xとあらたな特許出願の発明者が同一であるため、29条の2の規定の適用はない。新たな出願についても、権利を取得するためには、審査請求が必要である(48条の3)。


特許庁に掲載されている論文の論点は、次のようになっていた。

問 題Ⅰ
関連する複数の発明について特許を取得する際の手続についての理解を問う。
1.特許法第41条に規定する優先権主張(特許出願等に基づく優先権主張)の要件とその効果
2.明細書又は図面の補正・出願の分割の要件とその効果等
(1)製造装置Aについて、補正・出願の分割
(2)製造装置Bについて、新たな出願

新たな出願については、記載しているけど、補正・分割については、ほとんど触れていなかったな〜。


問 題Ⅱ
甲は、医薬品の成分である物質Aを対象とする特許権(物質特許)を有している。その特許権の存続期間は、平成12年8月1日までであったものの、甲は、延長期間を3年とする存続期間の延長登録を既に受けている。甲は特許法第67条第2項の政令で定める処分(医薬品の製造の承認)を受けておらず、甲の通常実施権者である丙のみが上記処分を受けており、丙はそのために上記特許に係る発明を実施することができない期間が3年以上あった。丙の通常実施権は登録されていない。
乙は、平成13年1月ころから、物質Aを製造し、医薬品の製造の承認に必要な資料を得るために、同物質を使用して、臨床試験を開始した。甲は、平成13年12月に、乙を被告として、同物質の製造、使用の差止めを求める訴えを提起した。
この場合、被告の立場である乙が検討すべき次の事項について、訴えの提起時を基準として、論ぜよ。
(1)特許法第69条第1項の規定に関する事項について
(2)それ以外の事項について