意匠論文過去問 平成13年

問題Ⅰ
アメリカ合衆国のX社は、折り畳み式の携帯電話機の新しいデザインを開発し、意匠A、意匠Bを完成させた。A、Bは、開いた状態で表示部(ディスプレイ)と操作部が表れる構成のものであって、一つのデザインコンセプトから創作されていることから、全体及び各部の形状が共通している。
そして、A、Bとも表示部の形状を縦長の楕円状に造形している点をデザイン上の特徴としている。X社は、Aの表示部分の形状について意匠特許出願をアメリカ合衆国にしたが、AとBについては、日本国にも出願をしたいと考えている。X社から依頼された弁理士甲が、意匠登録出願に際して検討すべき事項並びに出願書類の作成に関し注意すべき点について述べよ。

パリ条約による優先権 A(米国)→A(日本)
関連意匠制度(10条)
一意匠一出願(7条)
動的意匠(6条4項)

意匠Aと意匠Bは、問題文の記載からお互いに類似するものと解される。よって、関連意匠制度(10条)を利用した意匠登録出願を検討する必要がある。さらに、意匠Aについては、米国に出願されていることより、パリ条約による優先権を利用することが考えられる。また、出願書類を作成するにあたり、注意すべきてんとしては、意匠A又は意匠Bが動的意匠である場合には、その旨とその機能の説明を願書に記載する必要がある(6条4項)。以下詳細に説明する。

(1)関連意匠制度
意匠Aと意匠Bは、類似しているため関連意匠制度を利用することを検討する必要がある。関連意匠制度は、デザインのバリエーションをもれのない形で保護するために設けられたものである。関連意匠制度を利用する場合は、次の要件を満たす必要がある。①意匠A又は意匠Bの一方を本意匠とし、他方を関連意匠とする。②関連意匠は、本意匠と同時か20条3項又は66条3の規定による本意匠を記載した意匠公報が発行されるまでに意匠登録出願を行う必要がある。③本意匠と関連意匠の意匠登録出願人が同一であること④本意匠に専用実施権が設定登録されていないことが揚げられる(10条1項、2項)。これらの要件をみたすことにより、意匠Aと意匠Bは、お互いの意匠を基に9条1項、2項に基づく拒絶理由通知を受けることがなくなり、双方の意匠の権利化が可能になる。

(2)パリ条約に基づく優先権
意匠Aは、すでに米国に出願されている。米国で意匠Aが公報等により公開されてしまうと、その後に意匠A、意匠Bを日本に出願したとしても、3条1項で拒絶されてしまう。そこで、米国で出願された意匠Aに対してパリ優先権を主張して、日本国で意匠Aを意匠登録出願することが必要である。意匠の優先権は、先の米国出願の日から6月以内に行わなければならない。意匠Bについては、上述の関連意匠制度を利用して、手続きを行う必要がある。

(3)