特許2500001号公報

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】第2500001号
(24)【登録日】平成8年(1996)3月1日
(45)【発行日】平成8年(1996)5月29日
(54)【発明の名称】垂直搬送装置の運行装置
(51)【国際特許分類第6版】

B66B 9/10 11/00
【FI】

B66B 9/10 11/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願平3−270805
(22)【出願日】平成3年(1991)10月18日
(65)【公開番号】特開平5−105372
(43)【公開日】平成5年(1993)4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
【住所又は居所】東京都港区元赤坂1丁目2番7号
(72)【発明者】
【氏名】安富 重文
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆一
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】木俣 信行
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】松井 信行
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】松永 義憲
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】増田 貞明
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 義矩
【住所又は居所】東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建設株式会社内
(74)【代理人
弁理士
【氏名又は名称】高橋 敏忠 (外1名)
【審査官】 水谷 万司

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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 上り通路(1)及び下り通路(2)にそれぞれ複数台のケージ(3)を備え、上部切換装置(20)及び下部切換装置(30)によりケージ(3)を相互に他方の通路に切り換えて循環運行でき、また、該切換装置(20、30)によりケージ(3)を待機部に移動できる垂直搬送装置において、該ケージ(3)はガイドレール(5)に複数対のガイドローラ(6)でガイドされてラックピニオン式昇降駆動手段(7)により昇降自在に取り付けられ、ケージ(3)の頂面には伸縮自在に一対のブラケット(8)が設けられ、それらのブラケット(8)は伸張時にケーブルプレート(10)に挿入するよう構成され、そのケーブルプレート(10)はシーブブロック(11)を介してケーブルでカウンタウエイト(12)に連結されており、前記上部切換装置(20)は昇降自在に、かつ支持軸(22)に対し回動可能に設けられてケージ(3)を把持するグラブ(24)を備えたアーム(23)を有しており、アーム(23)を下降してケージ(3)をグラブ(24)で把持し、前記ブラケット(8)を収縮してカウンタウエイト(12)に連結されたケーブルプレート(10)との係合を解除し、アーム(23)を上昇、回動してケージ(3)を他方の通路に切り換えるよう構成されたことを特徴とする垂直搬送装置の運行装置。

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は垂直搬送装置の運行装置に関し、特に、上り通路及び下り通路のそれぞれに複数台のケージを備え、上部切換装置及び下部切換装置によりケージを相互に他方の通路に切り換えて循環運行出来、また、該切換装置によりケージを待機部に移動できる垂直搬送装置であるエレベータの運行装置に関する。
【0002】
【従来の技術】垂直搬送装置に関し、本出願人は特願平3−83728号において、リニアモータ駆動エレベータを提案している。上記提案自体は有効なものであるが、しかし、循環運行するケージは、大量搬送時も小量搬送時も設置台数で同数であり、運行経費にロスが発生し、また、故障ケージが発生すると、循環運行がストップする不具合がある。
【0003】また特開昭48−58542号公報には予備ケージを有する循環式エレベータが開示されている。しかしながらかかる公知技術では、スライドレールにより上り通路および下り通路の移動ならびに格納を行っており、その間の移動作動が面倒である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目的は、故障ケージが発生しても循環運行がストップせず、好適に循環運行ができる垂直搬送装置の運行装置を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明による垂直搬送装置の運行装置は、上り通路及び下り通路にそれぞれ複数台のケージを備え、上部切換装置及び下部切換装置によりケージを相互に他方の通路に切り換えて循環運行でき、また、該切換装置によりケージを待機部に移動できる垂直搬送装置において、該ケージはガイドレールに複数対のガイドローラでガイドされてラックピニオン式昇降駆動手段により昇降自在に取り付けられ、ケージの頂面には伸縮自在に一対のブラケットが設けられ、それらのブラケットは伸張時にケーブルプレートに挿入するよう構成され、そのケーブルプレートはシーブブロックを介してケーブルでカウンタウエイトに連結されており、前記上部切換装置は昇降自在に、かつ支持軸に対し回動可能に設けられてケージを把持するグラブを備えたアームを有しており、アームを下降してケージをグラブで把持し、前記ブラケットを収縮してカウンタウエイトに連結されたケーブルプレートとの係合を解除し、アームを上昇、回動してケージを他方の通路に切り換えるよう構成されている。
【0006】
【作用効果の説明】上記のように構成された垂直搬送装置、例えばエレベータにおいては、大量搬送時は、全てのケージを上部切換装置のアームを下降してグラブでケージを把持し、ケーブルプレートとケージ頂面のブラケットとの係合を解除し、アームを上昇、回動してケージを他方の通路、例えば上昇してきたケージであれば下り通路に移して、ブラケットとケーブルプレートとを係合して下り通路を下降させて循環運行させればよい。
【0007】また、小量搬送時には、余剰台数のケージを上部の待機場所で上部切換装置のアームを下降させケージをグラブから外して待機させる。
【0008】また、例えば上り通路において故障ケージが発生して運行不能になった場合は、後続のケージを上昇させて連結し、後続のケージで故障ケージを上部切換装置まで押し上げ、前記アームのグラブで故障ケージを把持し、待機場所に移動して修理を行い、他のケージは運行を継続する。
【0009】
【実施例】以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0010】図1ないし図3において、上り通路1及び下り通路2には、複数台(図示の例では各3台)のケージ3a〜3c及びケージ3d〜3f(以下総称する場合は符号3を用いる)が昇降自在に収められている。図4をも参照し、例えばケージ3a、3fには、対向する外側にそれぞれドア4が設けられ、また、ガイドレール5に上下2対のガイドローラ6・・・でガイドされ、ラックピニオン式昇降駆動装置7により昇降されるようになっている。
【0011】ケージ3aの頂面には、図示しないシリンダで伸縮される一対のブラケット8、8が設けられ、その伸長した状態のブラケット8、8は、それぞれケーブルプレート10、10に挿入されている。そのプレート10には、シーブブロック11を介してカウンタウエイト12aが連結され、同様にケージ3bには、カウンタウエイト12bが連結されている。
【0012】他方、最上階FTの上の階FT1の床上には、上部切換装置20が立設されている。この装置20の図示しない旋回台上の支持軸22には、昇降自在なアーム23を介してケージ3のシリンダをつかむ回動自在なグラブ24が設けられている。そして、グラブ24でケージ3aを支持し、シリンダを収縮してブラケット8、8をケーブルプレート10、10から外すと、ケーブルプレート10、10は、シーブブロック11の下縁部で保持される。次いで図1において、ケージ3aを位置3a1に引き上げたのち、位置3a2に旋回し下降して下り通路2の図示しない同様なケーブルプレート10、10にブラケット8、8を挿入し、グラブ24を外すことによりケージ3aを上り通路1から下り通路2に切換えるようになっている。なお、符号13はシーブブロック11の駆動装置、14はカウンタウエイトガイドレール、15はケージ吊りワイヤロープ、16は通路1、2の側方に画成された待機スペースである。
【0013】本発明は、図示しないリニアモータによりケージの昇降を行う場合であっても、通常方式のエレベータにおけるワイヤロープ巻上げ機構(図1の符号13で示す駆動装置)で行う場合であっても、或いは図4の符号7で示す駆動装置によりラックアンドピニオン駆動を行う場合であっても、全てに適用可能である旨を付記する。
【0014】また、最下階FBの下の階FB1の床には、下部切換台車30がレール31、31上を走行自在に設けられ、そのレール31、31の一端には、待機スペース32が画成されている。この台車30の支持軸33には、昇降自在なアーム34を介してケージ3の底部を支持するグラブ35が設けられている。また、階FBの床には、下部ケーブルプレートロック装置36が設けられている。そして、グラブ35でケージ3fを支持し、ケーブルプレート10をロック装置36でロックしたのち、前記と同様にブラケット8、8をケーブルプレート10、10から引き抜く。そこで、ケージ3fを位置3f1に引き下げ、台車30を走行して位置3f2に移動し上昇させ、通路1の図示しないケーブルプレート10、10にブラケット8、8を挿入し、グラブ35を下げることによりケージ3fを下り通路2から上り通路1に切換えるようになっている。
【0015】このように構成され、大量搬送時すなわちラッシュ時は、上り通路及び下り通路2内の3台のケージ3a〜3c及びケージ3d〜3fを、上部切換装置20と下部切換台車30とにより上り通路1から下り通路2へ及び下り通路2から上り通路1へと切換えて循環運行させる。
【0016】また、小量搬送時すなわちラッシュ時でないときは、待機スペース16、32に余剰台数のケージ3を待機させ、残りの少数のケージ3をを循環運行させる。また、図5に示すように、5台のケージ3a〜3eが運行中に、例えば上り通路1においてケージ3bの駆動装置7が故障して運行不能になったときは、図6に示すようにケージ3bの乗客を下ろし、後続のケージ3cを上昇させる。そして、図7に示すように、ケージ3bの床下に設けたグラブ9でケージ3cに連結し、故障ケージ3bを最上階FTまで移動する。そして図8に示すように、上部切換装置20でケージ3bを支持してブラケット8、8をケーブルプレート10、10から外し、グラブ9の連結を解除してケージ3bを階FT1に引き上げ、アーム23を待機スペース17側に旋回して位置3b1に移動し、待機スペース17に下ろして修理を行う。
【0017】図9及び図10は本発明の別の実施例を示し、例えば40階の高層ビルに、10階F10までの第1のエレベータA、20階F20までの第2のエレベータB及び最上階FTまでの第3のエレベータCを設けた例である。この実施例では、10階10F、20階20F及び最上階FTまでについて、それぞれラッシュ時及びラッシュ時でないときに対し、運行台数を加減してキメ細かな運行管理を行うことができる。
【0018】
【発明の効果】本発明は上記のように構成されており、以下の優れた効果を奏することができる。
(1) 上り、下りの各通路に複数のカウンタウエイトを有するケージを設け、搬送量に応じた台数のケージを循環運行し、過剰のケージは待機スペースに待機させることが出来る。
(2) カウンタウエイトを通路に残し、ケージだけを通路から移動でき、循環動作がスムーズに行われる。
(3) 故障ケージも容易に待機スペースに移動して修理できる。
(4) したがって、運行経費が安く、稼働率もよい。

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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が実施されるエレベータの一例を示す側断面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図1の上面図。
【図4】図1の内部機構を示す斜視図。
【図5】故障ケージ発生の状態を示す図面。
【図6】図5の次の状態を示す図面。
【図7】故障ケージを後続ケージに連結した状態を示す斜視図。
【図8】故障ケージの待機スペースに移動する状態を示す斜視図。
【図9】本発明の別の態様を説明する図面。
【図10】図9の直交断面図。
【符号の説明】
A・・・第1のエレベータ
B・・・第2のエレベータ
C・・・第3のエレベータ
FB・・・最下階
FT・・・最上階
1・・・上り通路
2・・・下り通路
3a〜3f・・・ケージ
4・・・ドア
5・・・ガイドレール
6・・・ガイドローラ
7・・・ラックピニオン式昇降駆動装置
8・・・ブラケット
9・・・グラブ
10・・・ケーブルプレート
11・・・シーブブロック
12・・・カウンタウエイト
13・・・駆動装置
14・・・カウンタウエイトガイドレール
15・・・ケージ吊りワイヤロープ
16、32・・・待機スペース
20・・・上部切換装置
22・・・支持軸
23・・・アーム
24・・・グラブ
30・・・下部切換台車
31・・・レール
33・・・支持軸
34・・・アーム
35・・・グラブ
36・・・下部ケーブルプレートロック装置

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【図1】

【図2】


【図3】

【図5】


【図6】

【図7】


【図10】


【図8】


【図4】


【図9】



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